石田 瑞穂 /MIZUHO ISHIDA


profile

1973年、埼玉県大宮市(現在はさいたま市)生まれ。

 獨協大学在学中、LUNCHPOEMS@DOKKYO のプランナーでもある原成吉先生のゼミナールに所属。アメリカ近代史を学んだことがきっかけとなり、詩を書くようになる。

 1999年に、第37回現代詩手帖賞を受賞。詩集に、思潮社より、新しい詩人シリーズから『片鱗篇(かけらへん)』、第63H氏賞受賞の『まどろみの島』、第54回藤村(とうそん)記念歴程賞を受賞の『耳の笹舟』などがある。

 



message

 

声のポイエーシス

 

 海外の詩祭やイベントに招聘されるたび、うらやましく思うことがあります。それは、詩の朗読を、人びとが日常的に愉しむ姿です。

 

 韓国には昔から、全国的に、たくさんの「朗読家」たちがいて、まるでカラオケでも愉しむみたいに、尹東柱から崔華國までの名詩を朗唱しています。ロシアでは、クリスマスのモスクワ広場で、プーシキンの詩がかわるがわる暗唱されます。

 

 詩の朗読が、ポップスやロック、ジャズやクラシック音楽とおなじ感覚で愉しまれているのです。日本でも、いつか、こんな光景を眼にできたら。

 

 今回、「LUNCH POEMS @DOKKYO」のディレクターをつとめさせていただくにあたり、ぼくは、あるリクエストをしました。それは、イベントや映像の制作を学生たちじしんがおこなうというものでした。詩人たちも、最終的に実行委員会がえらんでお招きします。このホームページも、ぜんぶ学生たちが制作、管理をしています。

 

 「LUNCH POEMS @DOKKYO」の運営は回をかさねるごとに前進し、学生さんたちのやわらかく、新鮮な感性が随所に光るプロジェクトに成長しつつあります。

 

 poemの語源は、古代ギリシャ語のpoiesisだといわれています。ポイエーシスは、ひろく「創造」を意味する言葉でした。ペンで羊皮紙に詩を書くだけではなく、大理石を彫るのも、料理をするのも、機を織るのも、演技をするのも、創造することはひとしくポイエーシスでした。つまり、すべての創造の核心には、詩があった、ということだと思います。

 

生身の詩人たちと出逢えるのは、とても、特別なことです。

 

 詩人たちの言葉と声が、獨協大学のみなさんや一般客の方々のこころに響き、大学の外へも新しい創造の波をひろげてゆく。ひとりの詩人として、そんな声のポイエーシスが響きわたるのを愉しみにしています。

 

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